総評

 

日本最大のコミュニケーションツールである『LINE』が満を持して送り出す、令和という新時代の小説大賞。その名にふさわしい作品が集まったと感じました。最終選考に残った10作品は、ミステリー、青春、群像劇、恋愛、SF、ライトノベルなど、とてもバリエーション豊かでした。選考委員一同、審査させていただく側であるにもかかわらず、すべての作品を一読者として楽しんで読ませてもらいました。これも、様々なジャンルの作品が集まった故であろうと考えます。最終的に一つを大賞として選出しましたが、すべての作品が甲乙つけがたい傑作揃いでした。本小説賞は、大賞作の『書籍化』ならびに『映像化』が確約されておりますので、近い将来、本でも映像でもお楽しみいただけるかと思います。是非ご期待ください。

 

LINEノベル統括編集長 三木一馬(株式会社ストレートエッジ 代表取締役)

 

 


大賞受賞作品

賞金300万円+映像化+書籍化

※作品はアプリ版でご覧いただけます。

星になりたかった君と

遊歩新夢

 

 

鷲上秀星は祖父と新星を発見したが、それを第三者に横取りされ、星から離れていた。

ある日、手伝いをした星祭りの会場で、『新星を見たい』という奇妙な少女、琴坂那沙と出会う。

少女の明るさが曇っていた秀星の心を次第に解きほぐし、再び新天体の捜索への意欲を呼び覚ます。そして、秀星は過去の横取り事件と向き合っていく事になる…。

星になりたかった少女と、その少女を星に名付けた青年の、二人の小さな物語である。

 

 

最終選考委員からのコメント

 

株式会社ストレートエッジ 代表取締役 三木一馬(LINEノベル統括編集長)

あくまで相対的に、という断りの上でですが、『文章力』や『ストーリー構成』、『キャラクターの描写』といった各要素が、他作品に比べ特出するほど高いわけではありませんでした。しかし、本作の全体評価を自分は高くしました。その理由は、今ある作品の背後に続く空間の広さ――つまり伸びしろがあると感じたからです。編集者的に表現すると『改稿したらさらに面白くなりそうな作品』ということになります。もちろん、今の内容がつまらないわけでもありませんし、他よりも劣っているわけでもありません。現段階の作品としても価値があり、さらに『素材』としても優れたものを持っている、ポテンシャルの高い作品だと思いました。具体的には、いわゆる難病少女モノに天体観測を掛け合わせたストーリーをベースとして、より作者の意図を表現すべく演出を強化していけば、さらに本作の魅力が発揮されるはずです。映像としても美しく映えるビジョンが浮かびます。その可能性を自分は評価しました。

 

日本テレビ放送網株式会社 プロデューサー 植野 浩之

LINEというメディアならでの小説とは何か?

多くの人々と共有し、共感出来るものではないか。

この作品はその価値に見合った作品だと思いました。また映像ビジネスをやっているプロデューサーとしての見方になってしまいますが、一番映像化した際の絵が見えてきた作品になります。映像化した際の「演出表現の拡がりを感じる作品」でもありますので、これからの展開が楽しみです。

 

株式会社アニプレックス プロデューサー 高橋 祐馬

何に価値を見出すかは時代と共に変化します。昭和は結果、平成は過程、令和は存在。存在という価値は、つまり誰かに関心を持って、その人を認め、受け入れることで生まれます。
本作『星になりたかった君と』は、令和という新時代ならではの“存在承認”という価値観を強く感じた作品で、小説として面白いことと共に、令和を冠する小説大賞として選出した理由の1つがそれになります。“共有”の描写に心を動かされたのも今の時代らしくて好きです。一方、あえてコメントさせて頂くと、小説としてもっと面白くなる余白があり、編集者さんからのアドバイスで更に輝く可能性のある原星の様な小説でもあると感じました。
これから、本作という存在が、出版という過程を経て、多くの人を感動させる星になるという結果を願っています。

 

LINE株式会社 執行役員 森 啓

まずは、第一回令和小説大賞にたくさんのご応募をいただき、ありがとうございます。どの作品も力作ばかり、とても楽しく選考させていただきました。

令和という時代に、LINEノベルは始まりました。ユーザーの皆さんの創作が世界とつながるというコンセプトを持っています。大賞となった作品の世界観でもそういった世界との繋がりが非常にうまく描かれており、今後我々もそういった世界、そういったサービスを作りたいと感じました。なかでも、作品が終盤に差し掛かっていく中での繋がりの高揚感は群を抜いて素晴らしかったです。映像としても観てみたいと強く感じたことが、この作品を大賞に決定づけるポイントとなりました。小説だけでなく、映像としても令和を代表するような作品をこのプロデューサー陣と作っていければと思っています。

 

 

作品を読む

選考委員特別賞

賞金10万円+書籍化

※作品はアプリ版でご覧いただけます。

負けるための甲子園

谷山走太

 

甲子園の決勝戦。野球部のエースでピッチャーである筧啓人は失投からホームランを打たれて負けてしまう。 そうすることで彼は1000万円を手に入れていた! しかしキャッチャーの矢久原純平は、彼の投球がおかしかったことに気づいてしまう。 後日、失投について問いただした純平は、啓人に怪しげな店に連れて行かれる。 その店には『なんでも』売っているという。 そして啓人の目的は、とある『人間』を買いに来ることだった……。

 

 

選評

まずタイトルとあらすじにインパクトがありました。「おっ?」と読者に感じさせる吸引力を持っている作品でした。内容もコンセプトが明瞭で、マンガを例に出しますが、三田紀房先生の『甲子園へ行こう!』に似た『腹黒甲子園』モノとしての面白さがあります。ストーリーとしても主人公がズルい悪役側としてではなく、これもマンガですが『タッチ』のような兄弟の高校野球、青春群像を感じさせるエッセンスを持ち、最後には球児達の一致団結感もあります。ラストの展開も良い意味で裏切られました。こういう意外性のある作品も、令和小説大賞の受賞作として選出することも意義があると感じ、選考委員特別賞としました。あえて一言いうなら、スライダーを手に入れる代わりに失う『代償』が、実はもっとも野球選手に重要な要素であるはずなので、そこのリアリティだけは再考していただきたいかもしれません。

 

作品を読む

なぜ銅の剣までしか売らないんですか?

エフ

 

なぜ最初の街には『銅の剣』までしか売ってないのか。

なぜどの街でもアイテムの売値と買値が決まっているのか。

この世界の"不自然"で"不自由"なルールに気づいたマルは、『商人ギルド』の本部を目指し各地を旅する。

倫理を逸脱した商人達を見て、マルは何を思うのか。

そして商人ギルド本部で世界の仕組みを知った時にマルは・・・。

 

 

 

選評

本作は、最終選考作品の中でもPV数がダントツでした。いわゆる『経済系ファンタジー小説(ライトノベル)』と呼べる内容ですが、おそらくは作者の出自からくる経験によって描かれる理屈にリアリティがあります。自身の経験を、商人見習いの主人公に置き換え、ファンタジー世界にたとえて現代ビジネスのノウハウやカルチャーをわかりやすく演出して描いています。ここに本作の個性がありました。ただ、文章力自体は高いとは言えず、ストーリー構成として途中の展開が単調(読ませたい内容にあわせてストーリーが展開しているという主客転倒な印象を受けます)であったことと、キャラクター造形自体は弱かったため、選考委員特別賞としました。これは余談ですが、タイトルにもキャッチーさがあり、届けたい読者層も明確に決めることができるので、小説賞を『出版ビジネス』と考えると、本作はとてもパフォーマンスが良いコンテンツになるのではないかと期待しています。

作品を読む

たくさんのご応募ありがとうございました。